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授業取材:概念構築(EG1)

授業取材:概念構築(EG1)- 気候変動緩和適応の科学

厳網林先生、丹治三則先生


講義概要

現代社会は気候変動の緩和と適応、人口の成長と減少、都市の膨張と縮小など、様々な課題を抱えている。私たちはこれらの課題を難問として困るのではなく、人間の考え方、住まい方、暮らし方を変え、社会を新しいパラダイムへ移行させる絶好のチャンスとみなすことができる。本授業はこの大局的視点から地球環境をとらえ、地球温暖化問題の科学基礎を学習する。そして、グローバルかつローカルにおける様々な気候変動の緩和・適応策の事例を取り上げ、個益と公益を兼ね備えた政策と行動パターンを抽出する。このプロセスを通して地球温暖化問題の基礎知識を学習し、それを解決するための学際的な視点を形成する。また、文献サーベイー、課題設定、計画作成の練習を通して、研究に必要なスキルを習得する。


授業の様子/湘南藤沢キャンパス

先生1名に対し、最大15名(取材当日11月16日の出席者数は8名)くらいの学生という少人数制。学生は日本、東南アジア諸国、ドイツ、イギリス出身で、日本語を流暢に話すことのできない外国人にも内容が伝わること、また日本人の学生を、英語で情報を取り入れるプロセスに親しませることを目指し、授業は英語で行われている。講義中心の週とディスカッション中心の週が交互に繰り返される。取材当日は講義中心の週。先生の説明が順序だてて進められ、学生が積極的に質問をしたり、また母国の状況について他の学生に対して説明を加えたりすることで、会話のキャッチボールの中で授業が進行していく。

今回の授業は京都議定書内に規定されたCDMプロジェクトについての説明からスタート。CDMとはClean Development Mechanism:「クリーン開発メカニズム」の略で、先進国が発展途上国に対し先進技術を提供することにより、発展途上国内のCO2排出量削減に貢献した場合、その削減量を、技術提供を行った先進国の削減分の一部とみなすという内容の、先進国と発展途上国の協力体制の下に実現するプロジェクトだ。
先生はモニターにPowerPointを映写し、黒板にキーワードを書き出しながら、内容を説明していく。
先生:「GHG(Green House Gas:温室効果ガス)には、CO2、CH4、N2O、そしてHFC(代替フロン)などがあり、この排出量が市場で取り引きされます。ここで、先進国と、先端技術さえあれば、安いコストで容易に排出量を減らすことのできる発展途上国との間で、Emission Trading(排出量取り引き)が行われます。発展途上国に技術面での投資を行うことによって温室効果ガスの排出量を削減する取り組みを行うと、その分の排出枠を欧州の先進国や日本などが獲得することができるという仕組みです。いいですか?」

学生に説明内容がきちんと理解されたかこまめに確認がなされ、また生徒の側からも、不明点があるとその場で質問が投げかけられながら授業は進行する。

続いてCDM証書の課題についての説明。CDMプロジェクト認定審査に時間がかかるという点について、学生間で意見のやり取りが行われた後、先生はCDMがそれでも、途上国における公害防止、雇用の創出という意味で重要である点を伝え、審査を迅速化するため、MRV(Measuring Reporting Verification)は現場のリソースを強化する必要がある、とまとめた。

ここで、日本国内の産業別エネルギー使用量の円グラフが示される。
家庭とオフィスでエネルギー使用量が全体の50%を占めることが読み取れる。

学生からの「電力は全産業が使っているものなのに、どうして「電力産業のエネルギー使用量」という項目が別個に存在しているか?」という質問に対して、先生が一般的に発電効率は40~50%と言われ、残り50~60%は電気産業で放電され、市場に出回らない電力であることを説明。電力産業のエネルギー使用量が、電力として市場に供給されることのなかった電力のことを指すことを理解し、発電システムの効率改善の重要性を実感する対話がなされる中、話題は自然と、「発電システムの効率化」という、次のテーマへの転換が行われた。
震災前、日本はもっと原発を作る予定だった。現状、原発への電力依存度は25%。これを2018年に40%台に押し上げる目標があったのだ。その理由のひとつとして、原子力発電にGHG削減効果があるとみなされることが挙げられる。一方再生可能エネルギーについて見てみると、日本ではずっと1%台の推移だ。ヨーロッパでは風力、太陽光発電が全発電量の10%を占めている。

日本国内の原子力発電所の分布を見てみると、3つの県(福井:関西電力、新潟、福島:東京電力)への集中が確認できる。40%目標を達成するには、福島と青森県にあと9基を作る必要がある。地域住民の反発により、これあで原子力発電所を擁していない地域への新規設置が難しいことから、既に原発や最終処理場を抱える地域にさらに施設を追加設置する方策しか無いのが現状である。

ここで東京電力の需要・供給電力量を確認(震災前の数字)最大:16,143万kW
最大供給量:5,804万kW
緊急時の供給余力(電力会社は常に余力を持っておく必要がある)5.8%
消費量が最大となるのは夏(空調使用等)

日本の電力供給システムは、東西で周波数が異なる
西:60Hz
東:50Hz
150年前、関西電力がドイツから、関東の電力各社はアメリカから発電機を購入したためである。このため東京電力は関西電力の発電による電気を使うことができない。東北、北海道電力は東京電力と同じ50Hz帯の電気を発電しているが、地域の人口、産業規模が小さいため、発電量が少なく、関東に電力を供給するほどの容量を有していない。2011年3月の震災により、東京電力の3分の1に当たる原子力、火力あわせて1,200kW分が使えなくなった。特に汚染と安全対策の不完全性により再稼動の見込みが立っていない原発2基分(470+450≒1,000kW)の電力を節約し、電力消費を4,804万kWに抑えなければならない。原子力に代わる、その他の技術を導入が求められる。

世界の再生可能エネルギー

風力、液化バイオマス(水浄化)、地熱、水力などさまざまな再生可能エネルギーによる発電が行われているが、主流は据付費用が安価な風力発電である。各国の発電量を見てみると、デンマークは全発電量に対する再生可能エネルギー発電の割合が25%と非常に高い。ドイツ、イギリスも据付を進めているが、日本、アメリカはなかなか伸びないのが現状である。ただし、日本で太陽光発電を行うと70~80%、風力では30~50%の電力供給が可能という試算がある。日本では資源、技術は整っているが、費用負担政策が問題となっている。

RPS制度(日本、イギリスイタリア、オーストラリアなど)
FIT制度(デンマーク、ドイツ、スペイン、オランダなど)
RPS:Renewable Portfolio Standard(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)
FIT:Feed-in Tariff(再生可能エネルギー電力全量固定価格買取制度)

RPSでは政府が電力会社の総発電量に占める再生エネルギーの割合を定めるのに対し、FITでは、発電された再生エネルギー全量の購入が電量会社に求められる。

震災後、日本政府はFIT制度を実行することと決めたが、価格は決まっていない。国内の電力会社は、太陽光発電は天候に左右されるため、電力の安定供給を第一目標とした場合、供給を止めないために送電システムに巨額の投資が必要になる、としている。

米国テキサス州ではRPSが実施されている。再生可能エネルギーで全電力の5%をまかなうことが義務付けられている。テキサスには風力、太陽光、原子力などたくさんの電力会社があり、送電会社は2社。電力の販売価格は家庭、工場への供給を行う送電会社が決めることになっている。(市場ベースの自由化)。

カリフォルニアの場合、2001年に1ヶ月の大停電があった。これは送電会社を州政府がコントロールできなかったため、電力価格が下がり、送電会社の経営が悪化、数社が倒産したことによるものである。競争激化の結果、安定供給ができなくなった例である。安定供給と価格の自由化の両立は難しい。日本では東京電力、関西電力が安定供給を第一目標とし、自由化に反対したが、自由化の行われている国は多くある。

ここまでの説明が終わったところで90分の授業時間が経過。再来週は今日の講義内容を基に、原発是非に関するディスカッションが行われると言う。


学生さんへの質問

学生さん氏名:マシュー・ジョーンズさん(Mr. Matthiew Jones)イギリス国籍

Q: 授業の雰囲気はどうですか? A: とてもいいですね。活気があると思います。自然とディスカッションが始まったりしますからね。再来週のようなディスカッションを中心とした授業のときには、今日のような講義を軸とした週よりも、さらに活気が出てきます。机の配置も楕円形に変えて、話し合いがし易いような雰囲気が高まりますからね。

Q: この授業を通して学んだこと、発見した視点があればおしえて下さい。A: 今日は特に外国での再生エネルギーに関する取り組み、そして各国の電力供給体制について知ることができました。母国以外のさまざまな国でどのような取り組みが行われているかということを知ることができるのがいつも新鮮です。

Q:マシューさんの研究分野は?気象変動と文化遺産の保護を関連付けて研究しています。特に日本の厳島神社の保護活動について研究しています。

Q: 授業で学んだことを、どう生かしていきたいですか?
A: 環境モニタリングや実地調査など実践的な学習を積み重ねていますので、そこで得た知識は今後すぐに役立つツールとして活用していきたいです。

Q: 将来はどうしたい?
A: 活動の拠点はイギリスとすることを計画しています。日本の文化遺産保護活動から得た知識をイギリスに持ち帰り、イギリス国内の文化遺産保護活動に生かしていきたいと考えます。