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学生インタビュー:土井亘

2012年にEIプログラムを修了し、建築家自身の手によって建設される建築を実践するためムンバイで仕事を始めた土井亘君に彼自身の経験をインタビューしました。学生時分も非常に活動的だった土井君は、2011年と2012年には修士課程に在籍しながら津波被害を受けた地域の復興プロジェクトにも深く関わっていました。


1)大学院入学(EI参加)までの経緯・経歴を教えてください。

2006年に慶應義塾大学環境情報学部に入学。大学1年より、建築家の坂茂研究室に所属。建築の設計を学びながら、被災地などの復興支援として仮設建築を建てる機会を数多く経験。卒業制作では都市における墓地問題をテーマとして扱い、新しい墓地空間の在り方の提案を行う。その卒業制作は、学内において伊藤滋賞(学内最優秀賞)を受賞。JIA建築コンクール神奈川大会で奨励賞受賞。

卒業後1年間はどこにも所属せずに、旅行を中心に建築や街を見て回る。また、その年にイタリアのベニスビエンナーレ(国際建築展)のプレイベントであるStudioplexにて、慶應義塾大学代表として出展・発表。その後、政策メディア研究科に入学。

2)現在の活動について教えてください。SFCやEIプログラムで学んだ事はどのように生かされていますか?

現在はインドのムンバイに拠点を置くStudio Mumbaiという建築の設計・施工を行う事務所で働いています。ここの事務所の特徴として、インドという途上国において、クオリティの高いものを作り出すために、自分たちで全てやってしまう、という点が挙げられます。具体的には、基本的になんでも作る。必要となるデザインのものが市場に無かった場合、自分たちの手でデザインし作る。それの繰り返しにより、事務所独自のアーカイブが蓄積し、建築の設計と施工が一体になった状態で仕事をしています。私は、この事務所のArchitectとして、設計に取り組んでいます。実際の作り手である大工と打ち合わせを密にすることにより、常に具体性を持ちながら仕事に携わる事が出来ています。

SFCで学んだ事はたくさんありますが、私のなかで一番大きな事は、常に主体性を持って関わる、という部分です。どういう事かと言いますと、SFCには良くも悪くも体系化されていない部分が多くあります。例えば、建築の分野で言うと、他の建築学科では当たり前に1年生にやる内容の事を、授業ではあまり教えてくれなかったりしますが、いきなり最先端の技術に触れながら建築の枠組みを超えた授業などが多くあります。つまり、必要になることに対しては自ら知識や情報を取り入れる必要があり、待っていては何も始まらないという部分です。それが、端的に言うと主体性という言葉になると思うのですが、ここで働く事も同様に主体性が非常に重要になっています。

3)大学院ではどのような経験をしましたか?それはあなたにどのような意義がありましたか?

大学院入学直前に、東日本大震災が発生しました。その直後から、学部時代の恩師である坂茂氏とともに被災地復興支援活動を行いました。坂茂氏のもとで行ったプロジェクトは、被災地における避難所のプライバシーを守る為の間仕切を考案し、設置するというものでした(通称PPS)。これは学部時代に、震災に備えて前々から設計され考案されていたものですが、東日本大震災を受けてすぐに改善案を作り、震災の10日後には現地に入り、設置活動を行いました。この活動は最終的に49箇所の避難所において、計1872セットの間仕切をすることとなりました。

また、その一方で、小林博人教授の応用環境デザインという授業では、被災地である南三陸町において、集会所を設計・施工を行うというプロジェクトを行いました。とにかく被災地の力となれることをしよう、という授業の枠を越えたこの科目では、履修者のみならず、多くの人を巻き込んでのプロジェクトとなりました。この建物は、素人でも施工が出来るように、新しい工法として合板を組み合わせていくことにより構造が出来上がるという仕組みを考案し、実現させたものです。そのプロジェクトでは、現地に行って、現地の方たちと関わり、様々な経験をすることができました。

その南三陸のプロジェクトから派生し、石巻の前網浜という所で同様の建物の設計・施工の依頼を小林博人教授が受け、そのプロジェクトも同様に主体的に関わらせて頂きました。このプロジェクトにおいては、南三陸での反省を活かすこと、そして誰でも建てることが出来るように施工マニュアルを作るなどの活動を行いました。

このように、実際に考えたことや、やるべきことなどを現実に実現させるということが、いかに難しく、そしていかに重要で意義深いかということを学びました。建築においては、建築家は設計をして、施工業者が施工をする、というのが通常ですが、これらのプロジェクトにおいては設計し、かつ、施工も行うということにより、建築の最初から出来るまでを一貫して関わることができました。このような経験を最終的に修士論文としてまとめました。

4)あなたが興味を持っていた点や視点はEIプログラムで学ぶ事により変わりましたか?もし変わったらな、その変化は何によりもたらされましたか?

これはEIプログラムならでは、というのかどうかは分かりませんが、大学院をEI・政策メディア研究科ですごすことによって、自分の進むべき道が少なからず分かり始めた気がしています。この事は、様々なプロジェクトがあることによって、多くのことを経験する機会が数多く存在していました。様々なプロジェクトがあるからこそ、自分自身の興味関心や専門性をどこに位置づけて特化させていく、要するに相対化させる、という事に対して効果的な環境であった点によるものだと思います。

5)将来EIプログラムに参加しようとしている学生へのアドバイスやEIプログラムの改善案等、ご意見をお聞かせください。

アドバイスとして。様々なプロジェクトがあるからこそ、自分が本当に何がしたくて、何をする必要があるのか意識的にならないと、1つ1つのプロジェクトに振り回されてしまう懸念があること。また、何かをやると決めたら徹底的にやること。中途半端にならないように自分を客観視することが重要だと思います。